北京日本文化センターは人民教育出版社と共催で、毎年春と夏に全国の初等・中等教育機関の日本語教師を対象とした研修会を行っています。この研修会では、新しい教育理念を考えると同時に、自分たちの日々の授業を振り返ることができるように内容を工夫しています。以下に、2016年夏季研修の様子をご報告します。

ワークショップ・小グループによる教案作成

ワークショップ・ポスター発表
日程:2016年7月25日(月)~28日(木)
会場:人民教育出版社(北京市)
主催:国際交流基金北京日本文化センター・人民教育出版社課程教材研究所
テーマ:「語篇教学の視点から授業を考える」(中文タイトル:语篇与日语教学)
参加者:
68名(54機関)
うち、中等教育機関66名(52機関)、初等教育機関2名(2機関)

プログラム詳細
(1)事前課題
今までの授業を振り返るために、今までに自分が使用した教科書の中から課を1つ選び、その時作成した教案(1課分)を提出してもらいました。
(2)テーマに関する講義
◆「語篇教学と日本語教育」:朱桂栄先生(北京外国語大学北京日本学研究センター)
語篇教学に関する基礎理論について、語篇教学の外観、語篇教学の中心的な考え方、語篇教学設計する際の注意点の説明があり、その後、語篇教学での設計を体験し、考える機会をグループで持ちました。
◆「語篇教学と課程標準」:冷麗敏先生(北京師範大学日本語教育教学研究所)
改訂中の課程標準における語篇教学の位置づけについて説明がありました。
◆「語篇教学の視点から語彙授業を考える」:李家祥(人民教育出版社)
語彙学習のストラテジーや語彙の教え方などを語篇教学の視点を交えて説明がありました。
◆「語彙教学の視点から読解授業を考える」:小川佳子(国際交流基金北京日本文化センター)
読みかたを育てる授業活動を紹介し、語篇教学の視点から授業を考えました。
◆「ポートフォリオの教育的機能」:平田好(国際交流基金北京日本文化センター)
21世紀型スキルの説明も含めて、ポートフォリオの教育的機能について紹介がありました。

(3)事前課題分析とワークショップ(3~4人のグループ作業)
担当:張金龍(人民教育出版社)、小川佳子(国際交流基金北京日本文化センター)
ワークショップの目標を、語篇教学の視点を取り入れた授業をデザインすることに設定し、グループごとに考え、最後にポスター発表を実施しました。
| 研修2日目(7月26日) |
| 事前課題分析
(40分) |
全体討議
(2教室に分かれて実施) |
代表者1名が事前課題で提出した教案について説明をし、その後、全体で、語篇教学の視点からその教案について考察・検討しました。 |
| ワークショップ①(110分) |
各グループで事前課題分析
(2教室に分かれて実施) |
3~4人のグループに分かれ、まず前日の講義についての振りかえりを行いました。その後、各自の事前課題の教案について、グループ内で改善点を検討しました。 |
| ワークショップ②(110分) |
教案作成
(2教室に分かれて実施) |
各グループで、教科書『日語』を使って、1コマ(40分程度)の授業教案を、語篇教学の視点で作成しました。 |
| 研修3日目(7月27日) |
| ワークショップ③(50分) |
ポスター作成
(2教室に分かれて実施) |
前日作成した教案を、ポスターにまとめ、発表準備をしました。 |
| ワークショップ④(110分) |
ポスター発表
(2教室に分かれて実施) |
5グループが1つの班となり、班内でポスター発表をしてもらいました。 |

グループによるポスター作成
(4)教学経験交流会
3つの班(①高校から日本語学習開始の生徒を受け入れている学校②中学から日本語学習開始の生徒を受け入れている学校③職業学校及び第二外国語として日本語学習をしている学校、その他)にわけて、教学の交流を行いました。
(5)授業実践例紹介
研修参加の先生方に、文化を扱った授業の実践紹介をしていただきました。
★趙凯芳先生(上海市航空服务学校):飛行機のお寿司弁当
★馬力晗先生(江苏省常州旅游商贸高等职业技术学校):侘びと寂から見た日本人の美意識
★史広玲先生(大庆外国语学校):中学校一年生向けのいけばな教学
★席芬先生(中山市小榄中学):日本式卒業式、卒業文集作成等
★魏譞先生(北京市北外附属外国语学校):北外付属外国語学校の日本文化教学(日本の姉妹校との交流等)
★大瀧夕先生(湖北省黄冈市外国语学校)、大日方春菜先生(内蒙古通辽市科尔沁区第三中学)、若林和夫氏(人民教育出版社JICAシニアボランティア隊員):盆踊りと民謡

(6)その他のプログラム
◆『艾琳学日语』紹介 担当:清水美帆(国際交流基金北京日本文化センター)
《艾琳学日语》は、DVDで学ぶ日本語『エリンが挑戦!にほんごできます。』を、中国向けに特別に再編集した日本語学習教材です。教材の概要を紹介しました。

※参考サイト
WEB版『エリンが挑戦!にほんごできます。』 https://www.erin.ne.jp/jp/
『艾琳学日语』特設サイト(中国語) http://www.jpfbj.cn/erin/
◆社史館・百年教科書展見学
人民教育出版社内にある社史館・百年教科書展示を、担当者の説明とともに見学しました。
◆国際交流基金紹介
国際交流基金および北京日本文化センターと、国際交流基金が主催する教師研修について紹介しました。また、2015年度中国中等日本語教師訪日研修に参加した余雨卿先生(浙江省仙居县横溪中学)と席芬先生(中山市小榄中学)に研修参加の感想等を話してもらいました。
(7)研修ポートフォリオ記入
毎日最後にふり返りを行い、研修でわかったこと、わからなかったことを整理しました。
日程表
| 日 |
時間 |
内容 |
司会担当 |
| 7/24(日) |
午後 |
|
|
受付 |
|
| 1日目 7/25(月) |
午前 |
9:00-9:30 |
30分 |
開会式 オリエンテーション 記念写真撮影 |
皮俊珺 |
|
9:40-10:40 |
60分 |
テーマ講義①「语篇研究与课程标准」 北京師範大学 冷麗敏先生 |
皮俊珺 |
|
10:50-11:50 |
60分 |
テーマ講義②「语篇教学与日语教育」 北京外国語大学北京日本学研究センター 朱桂栄先生 |
皮俊珺 |
|
12:00-14:00 |
|
昼食 |
|
| 午後 |
14:00-15:20 |
80分 |
講義③「語篇教学の視点から語い授業を考える」 人民教育出版社 李家祥 |
張金龍 |
|
15:30-16:50 |
80分 |
講義④「語篇教学の視点から読解授業を考える」 北京日本文化センター 小川佳子 |
張金龍 |
|
17:00-17:45 |
45分 |
特別講義「ポートフォリオの教育的機能」 北京日本文化センター 平田好 |
張金龍 |
|
17:45-17:55 |
10分 |
ポートフォリオ記入 |
小川 |
| 夜 |
18:00-20:00 |
|
懇親会 |
張金龍 |
| 2日目 7/26(火) |
午前 |
9:00-9:40 |
40分 |
参加教師による事前課題報告(授業実践報告) |
張金龍
小川 |
|
9:50-11:40 |
110分 |
ワークショップ①事前課題分析(検討と修正) |
張金龍
小川 |
|
11:40-14:00 |
|
昼食 |
|
| 午後 |
14:00‐14:50 |
50分 |
人教社社史館、百年教科書展示館 見学 |
張金龍 |
|
15:00-16:50 |
50分 |
ワークショップ② 教案作成 各自作業 |
張金龍
小川 |
|
|
60分 |
グループ作業 |
|
16:50-17:00 |
10分 |
ふりかえり(ポートフォリオ記入) |
張金龍
小川 |
| 3日目 7/27(水) |
午前 |
9:00-9:50 |
50分 |
ワークショップ③ ポスター作成 |
張金龍
小川 |
|
10:00-11:50 |
110分 |
ワークショップ④ ポスター発表 |
張金龍
小川 |
|
11:50-14:00 |
|
昼食 |
|
| 午後 |
14:00-16:50 |
170分 |
教学経験交流会(学校種類別) |
人教社 |
|
16:50-17:00 |
10分 |
ふりかえり(ポートフォリオ記入) |
人教社 |
| 4日目 7/28(木) |
午前 |
9:00-12:00 |
180分 |
参加教師による文化授業実践報告 |
若林 |
|
12:00-14:00 |
|
昼食 |
|
| 午後 |
14:00-14:30 |
30分 |
国際交流基金紹介 (訪日研修報告含む) |
守屋 |
|
14:30-14:50 |
20分 |
『艾琳学日语』紹介 |
清水 |
|
15:00-15:30 |
30分 |
全体ふり返り・アンケート |
小川 |
|
15:30-16:15 |
45分 |
修了式 終了総括・修了証書授与 |
張金龍 |